2021年の公示地価は平均値で対前年マイナス0.5％と、全国的に6年ぶりの下落となり、これまで低金利政策に支えられて上昇トレンドだった不動産価格は、大きな調整局面に入りました。インバウンド需要の激減やコロナ禍による外出自粛などの影響で、商業地では全体として0.8％下落し、東京・大阪・名古屋の三大都市圏でも8年ぶりに1.3％下落しています。

一方、宅配サービスなどの需要が増えたことで、流通拠点となりやすい高速道路インター周辺や、郊外の工場地帯などにある大型の土地では地価が上昇している例も。工場跡地などは再開発がしやすく、開発が進むと周辺地域の地価も上昇しやすい傾向にあります。

住宅地では、昨年に比べて地価が上昇した地域の範囲は狭まったものの、商業地に比べると変動幅は小さい印象です。地方圏の主要都市では、札幌市で4.3％、仙台市で2.0％と上昇しているところもあり、交通の利便性がよく人気の高い近郊の住宅地では、引き続き地価が上昇しているケースが見受けられます。

コロナ禍による在宅ワークの普及により、大都市から脱出して、不動産を買い求めやすい近郊エリアへ移り住む動きが活発になっているといえるでしょう。ワークスペースなど住まいに必要な間取りが変化し、引越しや住宅購入のニーズが増えたことも要因と考えられます。

今回の公示地価の下落は、賃貸住宅経営にただちに影響するものではないといえるでしょう。例えば所有する賃貸住宅周辺の地価が下落傾向でも、すぐに家賃下落などの不利益が発生する訳ではありません。さらに地価の下落は相続税や固定資産税の負担減につながるなど、長期的に見れば経営上プラスに働くケースもあります。

また、地価が下落傾向にある中でも、しっかりとマーケティングを行い、入居者ニーズに応える賃貸住宅を計画することで、不動産の価値を上げることも可能です。市場の動向やニーズを把握しながら健全な経営と安定した資産運用を目指しましょう。