近年は、自動車を持つ家庭が減ったといわれています。実際のデータを見ると、1世帯あたりの自家用乗用車保有率は2022年が1.03台となっており、この5年で微減という状況です。公共交通機関が発達しておらず、1住戸の敷地面積が比較的大きい地域では、自家用車の需要は変わらず高いと考えられます。

東京周辺や大阪・京都など交通機関が充実しているエリアでも、収入が高い層ほど生活資金に余裕があり、ステータスとして車を所有しているというケースも。車の所有率が高い入居者層をターゲットとするなら、都市部の賃貸住宅であっても駐車場は重要な設備となるでしょう。

賃貸住宅の戸数に対して駐車場の割合をどうするかは、いくつかの要素を複合的に考える必要があります。自治体や地域によっては、一定数を設けるようルールが決められている場合も。近隣に月極駐車場が不足している立地では、敷地内に駐車場がないと入居を敬遠されることもあります。駐車場部分の賃料設定など、物件全体での利回りをどう設定するかも重要です。

賃貸住宅を計画する際に敷地に余裕があれば、入居者の安全性を高める「歩車分離」、雨の日や重い荷物の積み下ろしにも便利で、高級感も演出してくれる「車寄せ」などを設けると、物件のアピールにもなるでしょう。駐車場内や出入口の見通しの確保、防犯カメラの設置なども安全性・防犯性のアップに貢献します。また、昨今のEVの増加に伴い、充電設備の設置も検討すべきポイントです。

高級車を所有する入居者層がターゲットの場合、「ビルトインガレージ」や「シャッターゲート」があると周辺物件との差別化につながります。そこまでは実現できない場合、駐車場に屋根を設けるだけでも印象はよくなります。さまざまな車種があるため、駐車スペースの幅や奥行き、天井高も考慮しましょう。

車関係の設備は、賃貸住宅の新築時に計画するもの。健全な経営のためには、物件トータルでの収支バランスが重要です。市場のニーズはもちろん、周辺の駐車場の状況を調査するなど高度な情報収集力と、それを活かした提案力が必要であり、そうしたスキルを持つ専門性の高い事業者に相談・依頼すべきでしょう。